中国茶が好きな方なら、一度は名前を聞いたことがあるかもしれない「芳村(ファンツン)」。中国・広州の西側にある、華南でも指折りのお茶の問屋街です。2026年10月、かつて暮らしていた広州を久しぶりに訪れ、茶器と茶寵を見に芳村を歩いてきました。
骨董市好きの私にとって、問屋街の空気はどこか骨董市に似ています。ずらりと並ぶ品物、店主とのやり取り、思いがけない値段との出会い。ガイドブックにはあまり載らない「お茶の街の日常」を、写真とともにお届けします。
この記事のポイント
・芳村は茶城が集まるお茶の問屋街。1階は茶葉、2階は茶器と分かれている
・茶器は量も種類も桁違い。店先には1個2元の紫砂の小杯も
・試飲で武夷山の紅茶を味わい、うさぎの茶寵を連れて帰りました
広州・芳村の茶葉市場ってどんなところ?
- 茶城が軒を連ねる「お茶の問屋街」
- 1階は茶葉、2階は茶器。茶城の中を歩いてみた
- 店先の紫砂小杯が「1個2元」
茶城が軒を連ねる「お茶の問屋街」

芳村には「茶城(ちゃじょう)」と呼ばれる大きな商業ビルがいくつも建っていて、その一つひとつに茶葉や茶器のお店がぎっしり入っています。今回歩いたのは、緑の看板が目印の「広東芳村茶業城」とその周辺です。少し視線を上げると、給水塔に名前が書かれた「啓秀茶城」も見えて、エリア全体が丸ごとお茶の街になっていることがわかります。

ここは観光地というより、完全に商いの場です。店の前には段ボールが積まれ、台車が行き交い、店主たちは電話片手に取引の話をしています。それでも、ふらりと入ってきた客を追い返すような雰囲気はありません。「喝茶吗?(お茶、飲んでいく?)」と声をかけられることもあり、買う・買わないに関係なく、お茶を介して自然に会話が始まるのがこの街のいいところです。
日本の骨董市でも、店主との何気ないおしゃべりから、品物の背景や時代を教わることがありますよね。芳村もまさにそんな場所でした。言葉に自信がなくても、まずは店先をのぞいて、目が合ったら軽く会釈するだけで十分です。
1階は茶葉、2階は茶器。茶城の中を歩いてみた

茶城に入ると、ガラス屋根の吹き抜けが広がっていて、思っていたよりずっと明るく開放的でした。通路の両側には「大紅袍」「正山小種」「鳳凰単叢」など、茶葉の名前を大きく掲げた看板がずらりと並びます。

私が歩いた茶城では、1階が茶葉、2階が茶器(中国語では「茶具」)と、フロアごとにきれいに分かれていました。茶葉を買いに来た人も、茶器を探しに来た人も迷わない、問屋街らしい合理的なつくりです。

2階に上がると、急須、蓋碗、茶杯、茶盤が、棚という棚を埋め尽くしていました。紫砂壺もたくさん並んでいましたが、量が多すぎて、一点ずつ見比べていたら一日では足りないほどでした。今回は「眺めて楽しむ日」と割り切り、お店の雰囲気を味わうことにしました。

紫砂だけでなく、マットな水色の磁器や、金彩をあしらった黒い急須など、デザインの幅広さにも驚かされます。紫砂壺そのものの特徴や選び方は、別の記事で詳しくまとめています。
👉 紫砂壺(しさこ)とは?宜興の急須の魅力と選び方・偽物(化工壺)の見分け方
店先の紫砂小杯が「1個2元」

茶具のお店を見て回っていて、思わず足が止まったのが店先の段ボール箱です。赤い紙に手書きで「紫砂小杯 2元/個」。日本円にすると40円ほどで、紫泥と朱泥の小さな杯が無造作に積み重ねられていました。
隣の青いケースには同じ形の急須がまとめて入れられ、ガラス越しの店内には大きな飾り物の作品が鎮座しています。一つのお店の中に、日常使いの量産品から手間のかかった一点物までが同居しているのが、問屋街の面白さだと感じました。
骨董市でも、段ボール箱の「100円均一」と、ガラスケースの中の品が同じお店に並んでいることがありますよね。値段の幅を知っておくと、目の前の品が「どのあたりのものか」を考えるヒントになります。安いものも高いものも両方見ておくことは、目を養ういちばんの近道かもしれません。
試飲と茶寵。芳村で出会ったもの
- 武夷山のお茶屋さんで試飲、妻へのお土産は金駿眉
- 茶盤の上の茶寵と、連れて帰ったうさぎ
- 広州・芳村の茶葉市場 視察レポのまとめ
武夷山のお茶屋さんで試飲、妻へのお土産は金駿眉

1階の茶葉フロアで立ち寄ったのは、武夷山のお茶を専門に扱う小さなお店です。出発前に妻から「紅茶を買ってきてほしい」と頼まれていたので、紅茶を探していると伝えると、店主が茶盤の前に座り、何種類も淹れてくれました。
蓋碗でさっと淹れ、ガラスのピッチャーに移して小さな杯へ。次々と出てくるお茶を飲み比べるうちに、香りや甘みの違いが少しずつわかってくるのが楽しい時間です。中国の茶葉店での試飲は、「買う前の味見」というより、店主と客が言葉を交わすための大切なひとときなのだと改めて感じました。
最終的に選んだのは、武夷山の紅茶「金駿眉(きんしゅんび)」。ふわりと甘い香りが印象に残る一杯でした。
あわせて、妻へのお土産に淡い色合いのマットな急須も一つ選びました。こちらは紫砂(泥)ではなく、磁器のものです。
茶盤の上の茶寵と、連れて帰ったうさぎ

試飲の席で目に入ったのが、茶盤の上に並ぶ茶寵たちです。布袋さんにガマ、獅子。長年お茶を浴びてきたのか、どれもしっとりとした深い色をしていました。茶寵は飾るためだけのものではなく、毎日お茶をかけてもらいながら、茶席の仲間として育っていくもの。本場の茶盤の上でその姿を見られたのは、うれしい収穫でした。

そして私も、茶寵をいくつか連れて帰ってきました。いちばんのお気に入りが、このうさぎです。空を見上げるような表情がなんとも愛らしく、ひと目で決めました。
このうさぎは、お湯をかけるとすぐに色が変わるタイプではなく、お茶をかけ続けるうちに少しずつ色つやが深まっていく「経年変化」タイプの茶寵です。茶盤の上の布袋さんのように、時間をかけて自分だけの色に育てていく楽しみがあります。
ほかにも、そら豆とかぼちゃの茶寵を選びました。どれも素朴で、茶盤に置くとほっとする顔ぶれです。
👉 茶寵とは?読み方・意味・カエルの縁起・育て方まで徹底解説
👉 茶寵の育て方完全ガイド|お茶のかけ方・艶を育てるコツ・NG行動まで
芳村から連れて帰った茶寵は、メルカリでも出品しています。気になる方は、のぞいてみてください。
広州・芳村の茶葉市場 視察レポのまとめ
・芳村は茶城が集まるお茶の問屋街。1階は茶葉、2階は茶器とフロアが分かれている
・茶器は量も種類も圧倒的。眺めて歩くだけでも十分楽しめる
・店先には1個2元の紫砂小杯。安いものと高いものを両方見ることが目を養う近道
・茶葉店での試飲は店主との会話の時間。お土産に武夷山の紅茶・金駿眉を選んだ
・うさぎの茶寵は経年変化タイプ。お茶をかけながら時間をかけて育てる楽しみがある
骨董市と同じように、芳村も「歩いて、見て、話す」ことがいちばんの楽しみ方でした。茶寵や紫砂壺に興味が湧いた方は、関連記事もあわせてのぞいてみてください。

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